リスのとっときおすそわけ

食をめぐるとっときの時間

野菜の美味しさと美しさを味わうレストラン 【CLISP】

桜散らしの雨が続く週末。

 

お花見しながら散歩でもしようかと思っていたのに、よりによって雨とは・・・

そんなお天気でも新宿周辺にやたらと人が多かったのは、この週末にお花見の予定を立てた人が急遽の雨に行き場をなくしていたからかもしれない。

桜ほど開花を待ち望まれる花はないんじゃないかと思うけど、きっと道ゆく人も同じ残念な気持ちだよね。

 

外界を隔てる異空間

 数カ月ぶりに合う友人を誘ってお楽しみのご飯の日。

お店は四谷三丁目のY字路の角の二階にあり、階段を登ってドアをくぐると、外からでは想像できなかった素敵な空間が。

店内に入ってまず目に入る果実漬けのガラス瓶がぐるりと並べられたキッチンカウンター。

 

ブラウンとアイボリー、グレーを基調にしたカラーが絶妙なインテリアに心奪われながら窓際の席に着くと、レースカーテン越しに入るぼんやりとした光がとても穏やかで、心地よい。雨の日のほの暗い影が入り込んだ店内では、電球の灯りも余計に温かみを感じられたと思う。

食事をいただく前から「あぁずっとここにいたいな」という気分になっていた。

 

 

なんだこのドリンクの種類は。

 この日は、前菜3種類とパスタ、メインのお肉、デザートの贅沢なコースで、こちらで選ぶのはドリンクのみ。

しかし!ドリンクのメニューが多すぎて、選ぶのに一苦労な嬉しい悲鳴。カウンターにずらっとならんだシロップやハーブ類の正体は、このドリンクに使われるものだとわかった。

たくさんのメニューから二種類を選ぶことができて、散々迷った末、「ビーツのスパイスコーラ」と季節限定「桜レモン」を選んでみた。

赤ビーツのスパイスコーラ(黃ビーツを使ったドリンクもあった)

桜レモン 桜の花びらがはらりと。

ビーツのスパイスコーラは、きつすぎないスパイスがとてもいい香りで、市販品のコーラというよりもスパイス漬けシロップをお水で割った飲み物。これがとても美味しくて気に入ってしまった。レモンも入って爽やかで飲みやすかったな。

今回はノンアルコールにしたけれど果実酒の種類も豊富で、そのどれも自家製シロップを使っているようだった。薄ら甘いだけの人工的なアルコール飲料とは一線を画すドリンクのメニューはこれだけでも大満足。

 

野菜の名前を覚えるのに必死なお品書き

 前菜一品目はビーツのフムス。アボカト添え。もっちとした美味しいパン付き。

ビーツ、なんて鮮やかでかわいい色なんだろう。最初に出された一皿でまず、野菜の色彩に心を鷲掴みにされる。

色はベリーみたいだけど、ビーツの味わいよりもひよこ豆のほっくり感と、にんにく×オリーブオイルの組み合わせが美味しい!いいオリーブオイルの香りがした。

 

前菜二品目はルッコラ、チコリ、デコポン、ブラットオレンジ、フェタチーズのサラダ。私の好きな柑橘のサラダだ。

チコリって知っていますか?

小さい白菜のような見た目なんだけど、私は少しセロリに近い味わいを感じました。

レタスとか白菜よりも、それ自体に味わいがあるような・・・?ヨーロッパだとサラダに良く食べられている野菜だけど、日本ではあまり見かけないよね。

 

前菜三品目は、ケール、トレビス、蕪、日向夏のサラダ。

この辺から野菜の名前を覚えるのに必死になってきた笑

フリルの付いたお皿が素敵すぎる。

日向夏のレモンイエロー、ケールの緑、トレビス(赤チコリ)の紫、桜色のドレッシング。

普段家で食事していると、野菜の味は味わっても、なかなか色にまで心を配ることはなくて、この一皿が目の前に出てきたときに、なんて美しい春色の組み合わせだろうと感動した。

味付けはとてもシンプルで、野菜のほろ苦さと日向夏の爽やかな酸味がそのまま伝わってくる。見た目の可憐さに反して野菜の味を直に感じる、ある意味ワイルドなサラダだった。

 

四品目は、豚とケールの菜花のトマトパスタ

豚肉は赤ワインで煮込んであるような味わいがして、お肉のコクがトマトの旨味とかけ合わさり、そこにケールのほろ苦さがアクセントになる、絶品パスタでした。

サラダに使われていたのは縮れたパセリのようなケールだけど、こちらは同じケールでも小松菜のようなケール。「菜花といえば、スーパーに並んでいるいわゆる「菜の花」を想像するかと思いますが、白菜とか他の野菜でも、芽が育って最初に出てくる花の部分があるんですよ」と教えてくれた。

 

ケールの菜の花なんて初めて食べた。

新芽が出て、大きく成長する前の一時しか味わえない菜の花。

一つの生命として、これから成長していくパワーが詰まっているのが菜の花だと思うと、それをいただくことにありがたみを感じる。

 

メインは、せせらぎポークとケールのソテー。

この豚肉、くさみが全く無くて、柔らかくジューシーな歯ごたえが美味しい。

先程のパスタと同じケールの菜の花だけど、ソテーされてることでより味わうことができた。

 

最後は、ピスタチオのセミフレッド、アフォガード添え。

セミフレッド(ふんわりしたアイスのようなデザート)に淹れたてエスプレッソをかけていただく。

ピスタチオの味わいが濃くてそれだけで美味しいので、私はそれぞれ単体でいただくのが好きだった。

 

ここまであまり触れてこなかったけれど、使われている食器もすべてかわいくて、美味しい料理の延長線で心の琴線に触れたのでした。

 

めくるめく野菜の世界

 最後の最後まで大満足なコース。

これでお一人¥3,800なのだけど、さまざまな野菜の料理、美味しい手作りの飲みのものをいただき終えて、美味しいものを食べた以上の幸福感に包まれた。お腹いっぱいだけど、不思議と苦しい満腹感がないのは、野菜の味わいを際立たせたシンプルな味付けの料理だったからだと思う。

お店の方によると、季節の野菜が農家から送られてきて、その時に入荷した野菜で料理を作るそうで、どの季節に行っても新鮮な野菜を使った料理がいただけるんだろうなと想像した。

 

普段意識を向けないところにある食材の魅力に気づかせてくれるお店にはなかなか出会えない!またご褒美や特別なときに再訪したいな。