リスのとっときおすそわけ

食をめぐるとっときの時間

高円寺〜永福町、バスに乗って美味しいものを食べに行く。

 

 

 お店で朝ごはんを食べるというのは、ハードルが高い。

 

東京は美味しいモーニングが食べられるところがたくさんあるけれど、

都内住みでない私にとって、モーニングが食べられる時間帯に東京に行くには、それなりに早起きをしないといけないわけで。

「食べたい!」が「寝たい!」を上回らない限り、行くことができない。

 

 三連休の土曜日の朝、いつもならお昼近くまで寝ているところだけど、

この日は食への熱意が眠気に打ち勝ち、起床に成功!

 

 向かった先は馴染みのない高円寺。

高校生の時に古着に憧れ降り立った以来、なんだかんだ10年ぶりくらい?

今日目指すお店は、駅前の太い一本道の先にあるので、迷わず着いた。

 
季節の野菜を使ったスープで朝ごはん

 ずっと行ってみたかったお店1件目は、itoma morningand night。

名前の通り、朝ごはんと夜ごはんの時間帯に営業している。店内はこじんまりとしていて、6,7人入ったらいっぱいかな。

可愛いエプロンをした女性の店主さんがこちらどうぞと言って、キッチン前のカウンター席に通してくれた。

 

 わくわくしながら席につくと、はっとするほど鮮やかな色合いのスープが小鍋で温められてる。

目の前がキッチンだと、これから食べるものが出来上がる過程が見えて、

自分のためのご飯が作られているんだなあと嬉しくなる。(店員さんと目が合いそうでちょっと緊張もする。)

 

菜花のスープと鶏のリエット付きパン。
白いタイルのキッチンカウンターが絵になる風景を作る。

 え、かわいすぎないか?

オレンジの線で囲まれたお皿の中に浮かぶきれいな緑色のスープ。

今まで菜の花をスープで食べたことはなかったけど、独特の苦みと辛味が生かされていて、身体を優しく目覚めさせてくれる。スープ好きとしてはたまらない、最高の一皿でした。

鶏のリエットをつけたパンも、菜花のスープによく合う組み合わせで美味しかったな。

 

 ちなもにもう一つのスープは、人参と金柑のスープだったのだけど、

本当はそちらも食べてみたかった。

 

 スープメニューは2週間で変わるらしく、このお店に通っていたら季節の移ろいを感じられそう。

 また行きたいし、”スパイスと野菜をもりもり使った料理”(店主さん談)を提供しているらしい夜も、ぜひ行ってみたい。

絵になる風景Part2。朝日が差し込む窓辺と玉ねぎのかごが、フランドル静物画のよう。
 
パンとイタリア郷土菓子 PANIFICIO VIVIANI

 itomaさんの斜向かいに福祉事務所というバス停があり、そこから20分ほどで終点の永福町駅に着いた。中央線と井の頭線に挟まれた空白のエリアを移動するには、このバスがとても便利だった。

 

 バスから降りると、もう見えた! 本日のお目当て2件目のパン屋さん。

 こちらのパン屋さんパニフィーチョヴィヴィアーニは、イタリアのパンとお菓子を作っている珍しいお店。

 でも、イタリアのパンってなんだ?フォカッチャしか思い浮かばない、、、などと思いつつ、店内に入ると早速良い匂い。

まず、絶対に食べてみたかったのが、レモンカスタードがつまったドーナッツ。

正式名称はボンボローニ。3種類全部食べたいけど、今日は一つだけ。

 

そして、ふと目に留まったこちらの黒板。

 ラップサンドにしてくれるピアディナと、イタリア式サンドイッチのパニーノ。

(豆知識:パニーノは単数形で、パニーニは複数形。)

イタリアパンの店で、本格的なイタリアサンドイッチが食べられるなんて、選ばないわけにはいかないよね。

 

 そしてこちらは、「アルタムーラ」というパン。断面が黄金色で、生地の目が詰まっていて、なんて食欲をそそる見た目でしょう...。南イタリアプーリア州の郷土パンなんだって。こういう地域色の強いパンが購入できるお店って、あまり無いんじゃないかな。

今回は買わなかったけど、次回ぜひとも味わってみたい。

 

パンを持ち帰りして、並べてみた。

左がプーリア産セミドライトマト+プロボローネチーズを挟んだチャバッタ
右が、ボンボローニクレマ

 

 このパニーノがですね、絶品で悶絶したのよ。

サンドイッチはここまで美味しくなるのか。

セミドライトマトは旨味がぎゅっと凝縮され、プロボローネチーズは軽くリベイクしたから、少しだけ溶けてむちっとクリーミー。高加水のパン、チャバッタは、なんだか嗅いだことのない、芳醇な小麦の香りがする。パン自体がとにかくうまい。

イタリアの美味しいものがここに詰まってます!どうだ!という声が聞こえてきそうな一品。知ってほしいような、知られてほしくないような秘密のサンドイッチだ。

 

 ボンボローニは、全世代の人が好きになれそうな、どこか懐かしさも感じる味わい。

生地がぎゅむっとしていて、ちぎれる食感がまた美味しい。レモンカスタードの黄色がちょろっと出てるところも可愛い。

ミモザお花見中のパン

 

 このパン屋さん、パンだけでなく、イタリアの郷土菓子も作っていて、気になった2つを買ってみたよ。

白いリーフ型がリッチャレッリ、茶色がズブリッソローナ。

 

 リッチャレッリは、トスカーナ州シエナの郷土菓子。

私、大学時代にイタリアの美術を勉強していたので、シエナに強い憧れがありまして。

中世には聖母マリア信仰があって、畑がどこまでも続く美しい田舎に築き上げられた気高い都市、というイメージがあって。シエナと聞いたとたんに、行きたくなってきた。

 

 話をお菓子に戻すと、リッチャレッリは、アーモンド粉がメインの材料で、そこにレモン果汁と、オレンジの皮が入っている。(レモンとオレンジはこのお店のアレンジ?)

イメージとしては、マカロンに近いと感じた。このお菓子は、作り方によっては食感がくちゃっとなってしまいそうで、美味しく作るのが難しいのではと想像。

でもこのお店のは食感もよく、アーモンドの風味が口いっぱいに広がって、美味しかった。

 

 ズブリッソローナはロンバルディア州マントヴァの伝統菓子。

バレンタインが近いからか、カカオ味にアレンジされていた。

 私、15世紀のマントヴァ宮殿の壁画を描いたマンテーニャという画家について論文を書いたことがあります。論文と行っても、学生が卒業するために書く程度の内容ですが…。

 

 研究していたのに、現地には行ったことがないという後ろめたさがあり、せめてお菓子だけでも味わおうということで。

すぐに崩れてしまいそうな、ザクザクホロホロとした食感が美味しい。こちらにもアーモンド粉が入っていたけど、イタリアの伝統菓子はアーモンドをたくさん使うのかな。

 

 どちらも、完璧で美味しいお菓子というよりも、素朴だけれど使う材料がシンプルで、ゆえに贅沢、という趣を感じる。「クッキー」という括りではなく、やっぱりこれは伝統菓子なんだなと、しみじみ納得しました(笑)

 
満足な休日

 日本じゃないみたいな素敵なカウンターのお店でモーニング。

お次は、イタリアパンの店。朝と昼のごはんが美味しい幸せな休日。

その食が生まれた場所に思いを馳せたら、遠くに行ってみたくなった。

 

我ながら、とてもいい食巡りのコースを見つけてしまった。